TSI BRAND INTERVIEW 「Norwegian Rain」

2019.05.31

注目のブランドに迫るこのコーナー。今月の"it"ブランドは、UNIT&GUEST㈱が卸展開する「ノルウェージャン・レイン」です。今年4月にオープンした日本第1号店の概要や今後に向けての施策についてインタビューしました。

― 従来の価値観を変えるショップに ―

| 「ノルウェージャン・レイン(以下、NR)」とは?
 ヨーロッパで最も雨が降る街として知られる、ノルウェーのベルゲンで2009年に誕生したアウターウエアブランドです。「伝統」「テクノロジー」「スタイル」の3つを掛け合わせるアイデアのもと、ビスポークテーラーでもあるデザイナーのT-マイケル氏、クリエイティブ・ディレクターのアレクサンダー・ヘレ氏が手掛けています。彼らは日本の繊細な技術と完成度の高い生地や素材にインスパイアされ、防水・防風や通気性を兼ね備えたハイテクな日本のリサイクル生地を開発。メンズのテーラリングを取り入れたオリジナリティあふれるデザインと融合することで、レインウエアに特化した唯一無二なブランドとして注目されています。
 当社での卸展開は2013年AWシーズンから始まりました。取り扱いがレディスのみだった当時、メンズ強化に向けて最初に取り入れたのがNRでした。ピッティウオモ(世界最大級のメンズ見本市)での一目ぼれからアプローチを何度も重ね、日本で販路を拡大していくミッションを受けスタートしました。大手セレクトショップ群との取引も増え、今では当社で最も付き合いが長いブランドになりましたね。

| ブランドの世界観を伝えていく
 彼らは来日するたび、日本人のセンシビリティや姿勢、カルチャー、おもてなしに感銘を受けます。繊細さや控えめなデザインなど、モノのクオリティに対しても同様です。北欧と日本人の感性は似ていると私自身も感じており、ビジネスパートナーとしてだけでなく、価値観を共感し合える仲間としてコミュニケーションはとてもスムーズです。そして親日である二人の思いは、ブランドの信頼に大きくつながっていますね。業界内での認知度も高まり、主要百貨店での展開やポップアップショップなど販路も広がってきました。特に来店イベントは好評です。NRの世界観を伝えるスペースさえあれば、フリーの方でも買って頂けるという手応え、そして多くの可能性を秘めているブランドだと実感しました。
 これらの施策に反響を得る中で、旗艦店を拠点にした世界観の発信にトライしたいと思うようになりました。そして約3年前からショップ構想を進め、今年の4月12日、東京・神田須田町に日本第1号店がオープンしました。本国ノルウェーのオスロとベルゲン、パリに続く世界4店舗目となるショップです。


| カルチャーをミックスした新たな価値
 ただショップを構えるのではなく、他ブランドとどう差別化を図るか、どう居心地良くお客様が滞在できるかを考えました。そうしてたどり着いたアイデアは、人が多いファッションエリアではなく、昔ながらの東京を感じられる東エリアでの出店です。不動産業者を頼らず、時には自ら歩いて家屋の住人に直接交渉するなど、2年がかりで見つけた昭和初期からガラス問屋だった木造建物をリノベーションしました。コンセプトは"Norway MEETS Japan"です。和を感じる古民家の空間にノルウェーのコレクション家具配置したほか、畳敷きのバースペースなど、双方のカルチャーをミックスさせた新たなコンセプトショップです。また、数多くの老舗店が点在し、商いの街としての伝統や大人のたしなみが存在する神田須田町は、ブランドが求める価値観ともマッチしています。
 オープン後はとても好調に推移しています。お客様の属性でいうと、NRとT-マイケル氏のインスタグラムフォロワーの方が大半を占め、さらには女性のお客様のお買い上げが多いことは想定外でしたね。街の皆さんもクチコミで来店下さっています。いずれも卸では得られない、ブランドにとっても新たな傾向と実績だと感じています。


| 今後に向けて
 このショップを拠点に、大げさにいうとショップ従来の価値観を見直すべく、さまざまなことにチャレンジしていきます。ECの利便性を思慮したショールーミング機能、コミュニティ構築を担うバー運営など、新たなプロセスやアクションによってNRの認知を高めることにより、ブランドを成長させていきたいと考えています。それに向けては店頭・本部の垣根をなくし、各人が店頭でお客様のリアルな声を吸い上げ、NRのフィルターを通すことで世界観を最大限に提供できる体制を作ることが大切です。
 「店舗内装」の表現、心地良い「接客」、わざわざ足を運んで下さるお客様のための「商品」施策を掛け合わせ、今までのショップ体験とは異なる価値やサービスの提供に向けて取り組むことが当面の課題です。この神田の地だからこそ実現できると思いますし、それが路面店を選んだ理由でもあります。その中で、昔からこのエリアにある食事処や小間物屋など、普段味わえない東京(江戸)の面白さも伝え、地域活性の一助にもなれればと思っています。お客様を自分たちで呼び込み、お客様を自分たちの手で作り上げていきたいですね。