下地社長インタビュー 「地域起点の新たなライフスタイルを提案」

2021.12.01

㈱TSIホールディングス(代表取締役社長:下地 毅、以下:TSI)は10月29日、北海道上川町(町長:佐藤芳治、以下:上川町)と持続可能な地域作りの実現に向けた包括連携協定を締結しました。本協定の趣旨をはじめ、上川町との取り組みや今後の展望について下地社長にインタビューしました。

― 2021年10月30日にTSIは北海道上川町と、新たな価値を生む地域づくりを目指し、包括連携協定を締結しましたが、そもそものきっかけは何だったのでしょうか。

 3年ほど前にあるイベントで、アウトドア系の雑誌を作っている出版社のイベント事業部に、上川町から出向していた若者と知り合いました。上川町のお話を聞き、すごく興味がわいて実際に訪ねてみたところ、その自然の雄大さ、町民の皆さまの温かさにとても感動したんですね。そのときに佐藤町長にもお会いして、町長の町への深い愛情、次世代への思い、上川町の自然を愛する心に感銘し、自然を守りながら町を持続的に発展させ、住みよい環境にしていくことへの前向きな取り組みや、「小さな町の中だけで考えていては未来には繋がらない、東京でいろいろなことを体験して学んで来い」と若い社員を出向させたり、大学生たちとシンポジウムを開いて意見を聞き、提案を実行したり、賞を受賞するほどクリエイティブ力の高いフリーペーパーを作成したりと、とても先進的な思想に共感を覚えたんですね。さらに町が抱える深刻な過疎化や高齢者問題もお聞きし、我々もファッションを通じて何かお役に立てないかと思った次第です。

― 上川町とはどんなところなのでしょうか。

 皆さんにはあまり馴染みのない町かもしれないですね。旭川空港から車で約1時間、旭川駅から上川駅までも約1時間の、北海道のほぼ中央に位置する人口3,500人ほどの小さな町です。日本最大の山岳自然公園「大雪山国立公園」や「層雲峡温泉」をはじめとする豊かな自然が広がっています。大雪高原温泉の秋は日本一早い紅葉が見られる場所として有名なんですよ。夏は大雪山周辺の川でラフティングやパドルスポーツ、サイクリング、トレッキングが楽しめ、冬は大雪山黒岳でスキーやスノーボード、森のガーデンで犬ぞりやスノーモービルなどを体験できます。私も冬にスノーモービル、夏にラフティングを体験しましたが、ものすごい迫力で絶叫するほど「快感!」でした(笑)。町営キャンプ場は1年を通じて使えますし、ツーリングするライダーたちも多いですよ。でも何たって、温泉が最高です。上川町は長野オリンピックスキージャンプの金メダリストの原田雅彦選手や平昌オリンピック銅メダリストの高梨沙羅選手の出身地で、高梨さんのご実家のコンビニは観光スポットにもなっていました。

 また、石狩川河川敷で毎年開催される層雲峡温泉「氷瀑まつり」は氷で作られた建造物やオブジェが広がり、国内のみならず海外からの観光客でにぎわう有名な冬のお祭りで、夜のライトアップは神秘的でとても美しいそうです。
近年は、大雪 森のガーデンにフレンチの三國清三シェフがプロデュースしたレストランとヴィラの「フラテッロ・ディ・ミクニ」をオープンして、地場の食材を使ったメニューやジビエ料理が人気となったり、杜氏としていくつもの賞を獲られている川端慎治氏を招いて北海道に約20年ぶりに酒蔵を新設し、大雪山系の天然水を使った「上川大雪酒造」の日本酒は数々の鑑評会で評価されているそうです。このお酒はオンライン以外の販売は北海道のみらしく、ネットではなんと定価の5倍の値がつくこともあるんですって。なんだか観光大使みたいになってしまいましたが、見どころ、食べどころ、遊びどころ満載なので、皆さんもぜひ訪ねてみてください。

― TSIとしては、どういう取り組みを今後、行っていくのでしょうか。

 上川町は日本で一番広い国立公園の中にあり、天然記念物に指定されている多くの動物や植物とともに生活をしている町です。まずはSDGs推進の一環として、上川町の自然遺産や文化の保護に努め、自然をベースとする観光の促進や新たな雇用を創出するためにさまざまな側面から協力していこうと思っています。
 
 たとえば、総面積の94%を森林が占める「林業のまち」でもある上川町の林業従事者を怪我から守る衣服の開発と提供。チェーンソーの事故から身体を守る衣服を開発、提供して、林業従事者が安心して仕事に従事できることで、次世代の雇用にも繋がると考えています。当社グループの㈱TSIソーイングが開発し、特許を取得したパンツは、チェーンソーが身体に少しでも触った瞬間にチェーンソーが止まるという優れた製品です。これをアップグレードして提供しようと思っています。

 また、夏に上川町を訪ねた際に環境省の方とお話をする機会があり、熊からの被害が年々増えていることをお聞きし、その対策として熊が隠れるところを減らすことや、注意喚起の立て看板を増やすことが重要であることを伺いました。我々スタッフと町が一緒になって、熊笹の刈払い運動などの活動を推進し、農作物の被害、人への被害を減らし、動物との共生ができる社会にしていくということも考えています。

 子どもたちが安心して遊べる河川敷の再生など、層雲峡オートキャンプ場に流れる小川や木の橋の再整備も町と一緒に行い、森林内作業者や観光客、子どもたちの安全、動物愛護などのための環境づくりに尽力していくつもりです。さらに将来的には、上川町にTSIの森を作って、子供たちの自然体験の充実やCO2削減の一助として、自然と共生するサスティナブルな社会の実現なども目指していきます。
それとともに、ファッションを通じて、子供たちに向けての"服育"も一生懸命やっていこうと考えています。学校の制服、レンジャー隊員たちのユニフォームやキャンプウエアなど、服でTPOを子どもたちに教えながら、服の持つ楽しさ、ワクワク感を伝えていきたいですね。 キャンプ場に設備されている備品や雑貨をアンドワンダーがプロデュースしていくこともぜひ進めていきたいです。

 また、高齢化の進む町のお祖父ちゃん、お祖母ちゃんが大切にしてきた服をお孫さんや子供たちに繋いでいくリメイク活動なども当社のお直し専門店「ReSew」を使って実現していきます。そのほかにも、町の皆さんの「人生の節目、節目に、TSI」が存在していけたら良いなと思います。上川町のために小さくても良いので、一緒に行動し、町の皆さんの生活に寄り添い、持続可能な循環を作っていきたいと思っています。


― 最後に今回の包括連携協定が目指すところを教えてください。

 当社は「世界で最も幸せなファッションカンパニー」をスローガンに、アパレル事業だけでなく、化粧品や飲食、住居設計など人々のライフスタイルを彩るコンテンツの開発も展開しています。上川町との本連携により、今後は今までのアパレル等の都市型事業だけでなく、地域社会との新たな接点を築き、当社グループのブランドがプロデュースする商品や施設の開発による関係人口の増加にも貢献していきたいと思っています。そして、これらの活動が当社へのエンゲージメントを高めることにも繋がると考えております。

 上川町は近年、官民一体となり積極的に観光振興や雇用創出などさまざまな地域創生プロジェクトに取り組んでいますが、特に力を入れているのはアウトドア愛好者や自然の中での生活を求める人たちが集う「通年型山岳リゾートタウン」をテーマとした町づくりなんですね。スイスのマッターホルンの麓の町のように自然を壊さず、自然を生かした観光都市を目指しているそうです。当社は多種多様なブランド開発で培ったノウハウがあるので、上川町が持つ多くの豊富な地域資源と融合して、地域起点の新たなライフスタイルやモノづくりの創出など持続的な発展を目指していきたいと思っています。

上川町の人たちに楽しんでいただける、喜んでいただける面白いこと、素敵なことを積み重ねていきたいですね。


<ご参考>
「北海道上川町役場」https://www.town.hokkaido-kamikawa.lg.jp

「フラテッロ・ディ・ミクニ」https://fratello-di-mikuni.com

「上川大雪酒造」https://kamikawa-taisetsu.co.jp

「大雪 森のガーデン」https://www.daisetsu-asahigaoka.jp

「アルパインリバーガイド」(ラフティング体験)https://www.alpineriver-guides.com